エニアグラムについて<1>
エニアグラムとはーー概説と歴史
エニアグラムという言葉はギリシャ語で、エニアは「9」、グラムは「図」を意味します。
9つの点をもった円周と、それを繋ぐ線からできています。この図がどこで生まれたのか、歴史ははっきりとわかっていませんが、『宇宙万物の本質を表す象徴』であり、図の起源は古代ギリシャ、あるいは古代エジプトにまでさかのぼるとも言われています。
エニアグラムの性格論は、1960年代に作られたもので、1970年代からアメリカで精神医学や心理学の研究者が注目し、研究を重ね、理論を発展させ続けているもので、新しい人間学、心理学として世界各国に広がっています。
このように、エニアグラムは古い根に育った新しい木であるということができます。古代からの知恵に新しい心理学が導入されています。また、人の心に深く語りかけてくるので受け入れやすく、日本でも人間関係改善のために学ぶ人が増え、教育関係者、弁護士、医師、心理療法士のほか、大手企業でも研修に導入するところが出ています。
日本では1989年に「日本エニアグラム学会」が設立され、エニアグラムを紹介してきました。エニアグラムの理論は研究者によって意見が異なる部分もありますが、学会では主に、ドン・リチャード・リソ氏とラス・ハドソン氏の理論に基づいて説明をしています。この他、初めて日本で教えた『エニアグラム入門』の著者パトリック・オリアリー氏の説明も取り入れています。
なお、エニアグラムは、人の性格を9つの類型でとらえています(性格類型論)。類型論は、似ている性格をいくつかのタイプにくくり、人の性格全体を網羅的にとらえようとします。特性論は、人の特徴的な特性(例えば、社交性、積極性等)を数量的に把握し客観化しやすいが、類型論では数量的、解析的に説明しにくいところがあります。しかしながら、ある人の性格の特徴を全体像として説明できるのでわかりやすく、つかみやすいという利点があります。
動機の違いが性格の違い
私たちが、日常で使っている「動機」という言葉と少し異なります。エニアグラムで言っている「動機」とは、自分をとりまく環境の中で、意識されていないこと、つまり無意識のことも多いのですが、どうすれば自分らしく満足して生きられるのか、その意思決定をしたり、行動を起こしたりするときの直接の要因です。この「動機」の違いによって、9つのタイプに分けられます。
各タイプの動機
タイプ | 動機 |
---|---|
タイプ1 | 自分なりの基準に則り、正しい間違いのないことをしたい |
タイプ2 | 人の役に立つことで、愛を得たい |
タイプ3 | 成果を出して、賞賛を得たい |
タイプ4 | 自分らしさを表現することで、感動を味わいたい |
タイプ5 | 情報を分析し、物事の本質を見極めたい |
タイプ6 | 責任を果たすことで仲間として認められ、安心したい |
タイプ7 | いろいろな可能性に挑戦して、人生を楽しみ幸せでいたい |
タイプ8 | 自分の影響力を行使して、存在を感じていたい |
タイプ9 | 他者と融和することで、平和な気持ちでいたい |
性格タイプと自己価値
「こういう自分だったら、生きていける」、「こういう自分だったら、大丈夫だ」、「こういう自分だったら本来の自分だと感じられる」、などと肯定的に自分のことを捉えている感覚を「自己価値」と言います。無意識であることが多いのですが、例えば、人から自身の「自己価値」に関わることを褒められると、「自己価値」が満たされ、活き活きとした気持ちになります。
各タイプの自己価値
タイプ | 自己価値 |
---|---|
タイプ1 | 自分は、理性的で客観的で正しい |
タイプ2 | 自分は、人の面倒を見る愛情深い人間である |
タイプ3 | 自分は、際立っていて賞賛に値する |
タイプ4 | 自分は、独特で感受性が強い |
タイプ5 | 自分は、理解力があり知的である |
タイプ6 | 自分は、信頼に値し責任感がある |
タイプ7 | 自分は、のびのびと振る舞い幸せだ |
タイプ8 | 自分は、力があり有能だ |
タイプ9 | 自分は、穏やかで安定している |
三つ組み「社会的スタイル」
ドイツの精神科医カレン・ホーナイが、人の心理的葛藤に対する対処法として「人々に対して動く」、「人々の方に動く」、「人々から離れる」という3つの行動パターンを挙げ、「主張型」、「従順型」、「後退型」と名付けました。エニアグラムの研究者が、それに9つのタイプに当てはめて整理したものが「社会的スタイル」です。
社会的スタイル | 該当タイプ | 特徴 |
---|---|---|
主張型 | タイプ3・7・8 | 自分が欲しているものを手に入れることを積極的、直接的に主張・要求する傾向(特徴)がある。自己中心的で自分を押し出していく。ものごとに対処するのに、人に守ってもらったり、引き下がったりせずに、自分を主張して押し進んでいく。このタイプに共通していることは、自分の気持ちに触れにくい面がある。 |
従順型 | タイプ1・2・6 | 自分が欲しているものを手に入れるために、努力しよう、よい子でいようとする傾向(特徴)がある。協力的、遵守的で他の人の役に立とうとする。ものごとに対処するのに、まず何をすればよいのかを判断しようとする。そして他の人が期待していることにどうしたら応えられるだろうか、どうしたら責任を果たせるのかと、自分に問いかける。ここでの従順とは他者に従うということではなく、自分の良いと思うことに従うことである。 |
後退型 | タイプ4・5・9 | 自分が欲しているものを手に入れるために、人から退き離れようとする傾向(特徴)がある。このグループは外界との関わりから離れて、引き下がっていく。日常的に、現実から離れることは容易で想像の世界にたやすく入っていく、どちらかというと控え目である。身体感覚を感じていたり、行動を起こすのが難しい。 |