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発行元:NPO法人日本エニアグラム学会   2013年4月21日 vol.376

エ二アグラム《自分探しの旅》
~~自己成長とコミュニケーションのための人間学~~

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日常の暮らしに変化がやってくる。そのときどう乗り切るか、この人たち
の交わりの面白さが伝わってくる。特技はユーモアにくるんだ計画性と実行
力。相手を楽しい気分にのせる実力とセンスは独得のもの。

上司から新しい役どころへと打診があると「やってみようと思います」と
返す。できないという「選択肢」はない。「新しい経験」が待っているから。

火曜日の朝、決まった時間にかける電話が母を生かしている。母の声や思
いを「聴く」のは一時間。「大好きなお母さん、長く生きて」と言いつづけ
る。すると「ジャガイモを植えようかね」と元気を取り戻している。

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■目次■
●エニアグラム日記 タイプ7「新しい席」 ●
●         タイプ7「私の火曜日」●
○編集後記            ○

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「新しい席」

★3月15日(金)★

仕事中、不意に上司から別室に呼ばれた。

「4月の人事異動の件だけどね。SさんがA県に異動することになったの
でね、あなたにはSさんの後任としてやって貰いたいと思っています」

・・・えっ?・・・   「想定外」って、きっと、私の顔に書いてあっ
たのだろう。

「あなたが、一番適任だと思ってね」

私も、職場の状況はよく判っている。ここ数年、新規採用者が続いたため、
中堅クラスが手薄なのだ。消去法でいくと、私しかいない・・・と言ったと
ころだろう。

それにしても、尊敬するS先輩の後任として、うまく仕事をやっていける
のだろうか?と不安が頭をよぎる。

「私では、知識も経験も不十分な面があるとは思いますが、周りの方の力
を借りながら、やってみようと思います」

「やるか、やらないか」を迫られた時、私は「やらない」という選択肢を
持ち得ていないのではないかと思う。

相手に気に入られたい訳ではない。いい恰好をしたい訳でもない。出世の
ための布石・・・なんて計算している訳でもない。

「新しいことを経験できる、折角のチャンス。逃してはもったいない」
これがホンネなのかもしれない。

★3月28日(金)★

今のメンバーで仕事をするのも、今日が最後。

ここ10日間、S先輩から引き継ぎを受けてきた。これまで隣の机だった
とは言え、全く違うジャンルの仕事。言葉の意味すら分からなかった。

自分の仕事も引き継ぎながら、新たな仕事を覚えるのは、異動の度に思う
のだけど、本当にエネルギーを必要とする。

「引き継ぐことは、大体説明したけど、何か質問あるかしら?」とS先輩
に問われ、

「私の頭の中のタンス。引き出しから洋服が溢れかえって、『えぇっと、
今日私が着たいお洋服はどこにあるかしら?』って、探してる状態です。引
き出しの中を整理して、どうしても見つからなければ、4月に入って、電話
で質問します」と答える。

頭の中が整理されていない状態の時が、一番辛い。

優しく、丁寧に教えてくださったS先輩には感謝しているけれど。
もう少し、整理する時間があれば、何とかなりそうな気がしている。

★4月1日(月)★

新年度が始まった。

これまで、S先輩が使っていた机で、引き継ぎを受けた仕事に早速取り組
む。

数年間、この仕事のアシスタントをしてくれているEさんと、仕事の進め
方を打ち合わせ。

「この仕事って、やり方はいろいろ考えられるし、『何が正解か』なんて
言えない仕事なんですよね。だから、マニュアルなんて存在しないし・・・。
Sさんも、結構、裁量で進めていらっしゃいましたよ」

だからこそ、責任重大。
でも、だからこそ「面白そう」な気がする。この仕事に携われるのも、何
かのご縁。

不安もあるけれど、私なりのペースで、私なりのやり方で、頑張っていこ
うと思う。

(笑みだるま)

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「私の火曜日」

★4月2日(火)★

毎週火曜日9時30分、よほどの用事がない限り私は群馬の実家の母(88
歳)に電話をかける。10回ほど呼び出し音が聞こえた頃、母が「はい」と
ちょっとかぼそい声で出てくる。この「はい」で母の体調をさっと推測する。
これから始まる一時間近くの会話を左右する最初の「はい」なのだ。

きょうは割と調子がいいらしい。あまりに低い声だと「どうしたの?具合
悪い?」と私も言ってしまうがそうではない限り「お母さん!私」と意識し
て元気な声をだす。

キッチンタイマーをセットして9時30分を忘れないよう、それまでに犬
の散歩も済ませ、洗濯も済ませ、と火曜日は9時30分が行動の基準となる。

そしてピピピとキッチンタイマーが鳴ったらトイレに入り、長電話にそな
え「よし、今日も明るい私でいきましょう」と自分にはっぱをかけて受話器
をもつ。

これがここ数年の私の火曜日、それでも昨年父が亡くなり介護の大変さか
ら解放され、亡くなってから時も過ぎたのでだいぶ母も元気になってきた。
声も明るくなったし、それほどの覚悟をしなくても電話をかけられるように
なった。

脳卒中で50代に倒れた父は社会復帰するまでにリハビリを頑張ったが、
やはり年を取るに従い軽い脳梗塞を起こしその都度介護度が上がり母は本当
に大変だった。

兄夫婦には下の始末はさせられない、と一人で頑張り続けたが、さすがに
心身ともにストレスがひどくついに心筋梗塞で倒れてしまった。幸い一命を
取り留め元気になったが、もはや父の介護ができるはずもなくやむなく父を
介護施設に入れた。

「聴く!」ということの難しさ、全部が愚痴になってしまうその電話をひ
たすら「聴く」ことがしんどい。ただ相づちをうち、母の気持ちを汲み取る、
それだけでいいのだがつい長引くと、聞いている私が苦しく、はやく解決し
てしまいたいので、じゃあこうしたら、ああしたら、でも仕方ないでしょ、
と勝手に考えを押し付けてしまったり、愚痴を言わないで、と暗に伝えてい
たように思う。

月に一度しか帰らない私がずっと世話をしている母の大変さを頭でしか理
解できずただ仕事のように割り切り、私の修行の場、どうにもならない哀し
い気持であった。

それでも母が心筋梗塞から生き延びてくれたのは私には救いであった。い
まは「もっとちゃんと聴いてあげられずごめんね」と謝るばかりだ。

母は父の死後、今度は母自身の死を毎回話題にする。私も最初は
「お母さん、そんなに死ぬことばかり言わないで」
と訴えていたが、最近は慣れたもので

「お母さん、死ぬまでは生きているんだからね。そして死なない人もいない
から安心して。お父さんにまだ迎えに来てはダメ、と頼んであるからまだ
死ねないよ」

「お母さんの葬式にはお母さんがいないんだね。どうしよう」というと

「そうなんだ、私の葬式には私がいないけど大丈夫か」

「でもお母さん、口はきけないけど、主役だよ」
などとコントのような会話をしている。
母も最後には笑ってしまう。

今日の電話も最後には「お前と話すと明るくなるよ。じゃがいももおまえ
や孫の為に植えよう。まだなんとかできそうだ。また来週ね、電話がとても
楽しみなんだよ」と言われた。

そして私は「私はお母さんに生きてほしい。大好きなお母さんに一日でも
長く生きてほしい」と同じセリフを言い続ける。

そして「大丈夫。兄夫婦と私にまかせて。お母さんの遺影にする写真は箪
笥の一番上、遺体にかける着物は箪笥の3番目。へそくりは・・・」と毎回
言うセリフを復唱し心配性の母を安心させ「また来週ね。元気でね」ときょ
うの電話もおしまいにする。

(ひさきょん)

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(編集後記)

4月ですね。

当学会も4月から新年度になります。

本年度のワークショップのスケジュールも決まっています。

http://www.enneagram.ne.jp/schedule.htm

たくさんの方の参加をお待ちしています。
(本永)

★エニアグラム日記の次号は、タイプ8。 5月21日配信予定です★

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