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発行元:NPO法人日本エニアグラム学会   2011年7月24日 vol.313

エ二アグラム《自分探しの旅》
~~自己成長とコミュニケーションのための人間学~~

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4月の入学式では、岩手出身の新入生が力強く宣誓した。
あの震災から、多くの人の心に変化がおきている。社会はこれまで贅沢を
追いかけてきたが、いまは人間の死や苦悩を超えてあるもの、見えないもの
を感じようとしている。

命はどこで、いつ終わるのか。生かされている者は、身を引き締める。
教綬は神父の言葉を聞きながら、深い示唆をうける。自分が生きている日本
を少しでも良いものにしたいと考える。中古のピアノを買った母親は、音楽
があればと子どもをながめている。

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■目次■
●エニアグラム日記 タイプ4「日本は祈りの期間」●
●         タイプ4「音楽があれば」 ●
○編集後記      ○

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「日本は祈りの期間」

★某月某日★
東日本大震災以来、私の生活で確実に変わったことが2つある。それはい
つ地震にあってもいいように非常用のグッズを携行して、「帰宅難民」に備
えていること。そして、教会に通うようになったことだ。

それまでは、カトリックの信者であることなど普段は忘れているような生
活で、1ヶ月に1回、安息日(日曜)のミサに参加すればよい方だった。ひ
どいときは1年に1回、クリスマスだけのクリスチャンだった。

大震災がちょうど四旬節(復活祭前の40日間の祈りの期間)の始まりと合
致したこともあるが、3月11日以来、平日朝のミサを含めて足しげく教会
に通っている。いつそんなに敬虔な信者になったのか、自分でも不思議だ。

4月の入学式では、岩手県出身の新入生の「がんばります!」という宣誓
に思わず涙した。少し感傷的になっているのだろうか。

日本全体が、しばらくは祈りの期間にあるように思える。

3月11日以来、津波に飲み込まれる家々や車、引き裂かれた家族など、
胸が潰れるような映像をたくさん見、話を聞いた。現地を訪れた人が言う。
「よい人も悪い人も同じように津波にさらわれた。ただ1mの差が生死を分
けた」と。そこには人間の尺度など何の役にも立たない「理不尽」な世界が
広がっている。

社会全体が、これまではぜいたく品やすてきな住居や車やおいしい物など
「見えるもの」を追いかけてきたのが、そうではなくて、人間の死や苦悩を
超えてなお存在する、向こうにある「見えないもの」を、なんとかして感じ
ようとしているようにも思う。

★某月某日★
各学部から選ばれた、いわば本学のエリートたちの前で話をする機会をも
らう。東日本大震災は、政府が国民を救ったのでなく、政府が国民によって
救われた震災だ、という話から入る。

「日本経済の課題」というテーマだったが、終わってみて心の中に伝える
べきことを十分伝えていない不全感が残った。なぜだろう、と考えてみて、
「あぁ、ゾンバルトの話を忘れてしまった」と思った。

ドイツの経済・社会学者ゾンバルトは、『恋愛とぜいたくと資本主義』と
いう著書で知られる。彼は、瀟洒な品物や男女間の高価なプレゼントなど、
「ぜいたく」(必要以上の欲望)がなければ経済は拡大しないと喝破した。
資本主義は「もっと、もっと」と永遠に欲望に駆り立てられることによって
続いていくシステムだというのだ。

確かに、経済がうまくいっているかどうかは、成長率つまり前年に比べて
何パーセント経済規模が伸びたか、で計られる。前年より今年の規模が大き
くなっていることが「成功」だというわけだ。

だが、永遠に伸び続けていく経済などない。日本は人口減もあり、これか
らは経済が縮小していくだろう。いわば、「ダウンサイジング」の時代だ。
しかし、それが不幸なことなのか。もう「見えるもの」の拡大は十分ではな
いか。そんな問いかけをしたかったな、と後になって思う。

★某月某日★
大学院の授業、政治体制の違う中国の留学生と話すのは楽しい。中国の民
主化の話と合わせて、宗教の話になる。中国では宗教を信じているとエリー
トのしるしである共産党員になれないという。レーニンが「宗教はアヘンだ」
と言ったように、確かに共産主義の理論と宗教は両立しない。

「で、あなたは宗教と共産党、どちらを信じているの?」と聞くと、北京
からきた女子学生はあっさりと「信じているのはお金です」と答えた。深く
納得する。経済が大きくなる、とはそういうことだ。

★某月某日★
朝のミサ、今週は主任司祭のN神父様の司式。姦淫の女に「罪を犯したこ
との無い者がまず石を投げなさい」という聖書の場面が読まれた。エニアグ
ラム学会にも来て下さった前島誠先生の名著『後ろ姿のイエス』を思い出し
た。

人間の定義に、「火を操ることのできる存在」というのがあるが、これか
らはそれに付け加えて「人間は原子力を操ることのできない存在」としたら
いいかもね、というN神父のジョークに大笑い。

東日本大震災の犠牲者・被災者のために祈る。「津波に飲み込まれた人は
一瞬だったろうけれど、私たちも必ず同じ運命に襲われる」という言葉にはっ
とする。N神父の言葉によれば「人生は火葬場への待合室」なのだ。私たち
にも、いずれは津波が必ずやってくる。その時までにどのような生を送るの
か。

私はこれまで政治学や人間のことを学んできた。自分が学んで来たことと、
N神父のような深い世界を結びつけることができないか、それによって自分
が生きている日本を少しでも良いものにすることができないかと、考えてい
る自分に気づいた。

★某月某日★
出勤途中の中央線で、西八王子で降りた3、4歳くらいの女の子が、降り
るときに「バイバイ」と私に手を振ってくれた。無性に嬉しかった。

大学へ。学部棟前で石巻に出発する大学のボランティアチームを見送る。

(ちゃんぽん)

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「音楽があれば」

★7月9日(土)★

今日は、3月に購入した中古ピアノの調律に専門の方に来ていただく日だ。
少し狂っていた音があったので、その音が調律されると思うと前の日からう
れしい気持ちだった。

調律師の方はいらっしゃると、調律を済ませた楽器のように心地よい音階
によって丁寧な挨拶をしてから、調律に取り掛かった。

2歳と3歳の子どもに絵本を読ませながらも私の耳はピアノの音に釘付け
になっていた。音の一つ一つがかけがえのない存在のように思えて、その一
つ一つを心をこめて受け止めたくなるのだ。

子どもの時から音楽やダンスは大好きだった。東京ディズニーランドに小
学校6年生の時に遊びに行ったが、ミッキーなどのキャラクターには一切目
もくれず、ミュージカルでのお兄さんお姉さんのダンスに尋常ではないほど
ノリノリで見ていたのもそのせいかもしれない。

目の前の子どもたちは私が集中していないことを察していつの間にか人形
を抱っこして保育園ごっこを始めた。

1時間ほどして調律が終了した頃には、ピアノの曲を1曲聴き終えたよう
な充実感を感じていた。

音楽さえあれば人は生きていけるように私には感じられる。
今日もやっぱりそう感じた。

(さくら)

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(編集後記)

私の最寄駅は、電車の引き込みが近くにあるので、朝は、最寄駅からの
始発電車が15分に1本ぐらいあります。

先日、始発電車を待つ列に並んでいました。前から2列目でした。3列
目にいても大体は、座ることができます。

しかし、その日は、後ろに並んでいる人の勢いに押されて、座れません
でした。そう言えば、小さいころから椅子取りゲームは苦手でした。

(本永)

★エニアグラム日記の次号は、タイプ5。 8月21日配信予定です★

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