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発行元:NPO法人日本エニアグラム学会   2007年3月18日 vol.146

エ二アグラム《自分探しの旅》
〜〜自己成長とコミュニケーションのための人間学〜〜

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レイモンド・カーヴァーに
『ささやかだけれど、役に立つこと』という小説があります。
今回はカーヴァーを思い出させる「ささやかなできごと」のなかで、
心が通いあう話。

父と子ども。店員に食事を出す両親。管をつけ横たわる叔父と手を
にぎりあう甥。さまざまな人生を深く見られようになった目に気づく。

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■目次■
●エニアグラム日記 タイプ9 「お父さんの成長」 ●
●            9 「おっちゃん、来たで」 ●
○編集後記                ○
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「お父さんの成長」

★1月28日(日)★
長男から電話が架かってきて、会社を辞めたいと言う。職場での理不尽な
ことをいろいろ並べ立てた。未だ子供だと思い情けなかった。私は長男の話
を一つ一つ丁寧に聞いてやることが出来なかった。

「お前は俺の話は聞こうとしないで、自分が困った時だけどうしようと言っ
てくる。そういうことがあると思うから、日頃からアドバイスしているんだ。
それを一々理由をつけて聞かずに結果だけ求めてもだめだ」

電話を切った後、長女に言った。
「Mを励ましてやってくれ。出来るのはお前しかいない。どうも俺は感情
的になってしまっていかん」

長女は言った。「私は何でもするけれど、お父さんの成長の機会を取って
しまうんじゃないの?」生意気なことを言いながらも長女は夜遅くまで掛かっ
て、兄に手紙を書いていた。

★2月27日(火)★
風邪気味で、病院へ行こうと急いで家に帰ってくると、長男が来ていた。

「このところ調子が良くて100%成約している」と嬉しそうに話をする。
私は「それは良かったね。頑張れよ」と言いながらも、内心ではこれからど
うなっていくのか心配であった。

家内がT医院へ行っているのを聞き、行ってみると10人以上の人が深刻
そうな顔をして待合室の椅子に腰掛けている。家内とはすれ違いであった。

こんなに待ってはいられないと思い、薬局に行くと家内が薬を待っている。
「迎えに来てくれて有り難う。体温を計ったら39.1度あり、インフルエ
ンザA型だと言われた」私は、わざわざ迎えに来たわけではないけれど、そ
れでも良いかと思い一緒に家に帰った。

★2月28日(水)★
会社の診療室は9時半開始である。少し早めに行って待つ。
体温は37.1度。一寸高い程度。熱が上がるようであったら、また来てく
ださいと言われ、薬を受け取って帰る。

夕方になりぞくぞくしてきたので、再び診療室に行く。体温38.1度。
インフルエンザの検査をしますと言われて鼻に棒状のものを突っ込まれる。
しばらくして呼ばれる。

「陽性です。すぐ家に帰ってください。会社の規則では熱が下がって2日
間は自宅待機することになっています」と言われ社内通達を見せられる。

困ったことになった。このままでは報告書類が期限までに終わらない。
話題の”タミフル”を受け取り職場に戻って報告すると、移されては大変
だから早く帰れと言う。書類を解りやすいように整理して、業務職に預け
後ろ髪を引かれながら会社を出る。
(のんきや)

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「おっちゃん、来たで」

★2月25日(日)★
実家に帰ると母が「ガス台を電化(IHクッキングヒーター)に変えた」と
いう。火の元の管理も楽で安全なので以前からそうしたいとは聞いていたが、
昨日電気店の店員さんが設置しに来たと。

夕飯を食べながらの話の中で、取り付けの予定時間から遅れるという連絡
があって待たされたこと、朝から忙しくて何も食べていないという店員さん
に母は家にあったインスタントのカレーうどんを作り食べさせてあげたこと、
その店員さんはご飯を2杯もおかわりして帰ったとのこと。

その出来事を母は、よっぽど腹が減っていたのだろうという感じで話しを
した。父も「若い子やし(若者だし)、朝もどんなもん食べとるかわからん
しなー」と。

私はスカパーのアンテナ設置の取り付けを依頼していたのに、予定時間よ
り大幅に遅れ、暗くなってやっと来てくれた電気店請負の工員さんのことを
思い出した。工員さんは私のアパートが探せず、電話で持ち合わせた場所に
私が自転車で迎えにいった。

自転車でアパートに戻る私の後ろから車でついてきてもらってやっとアパー
トに到着。工員さんは遅れたことを詫びつつ、早速取り付け作業にとりかかっ
た。受信できているかチェックをする段になって映像が映らず、周りの建物
が邪魔をしてこのアパートでは無理かと工員さんと二人で諦めそうになった
が、設定を調整したところ受信できた。

その瞬間のうれしかったことや工員さんの若さと人柄、朝から取り付けに
ずっとまわっているという話を聞いて、遅れてきたことへの腹立ちや取り付
けまでの経緯のあれこれは忘れ、夏の暑い日だったのでとりあえず冷蔵庫に
あったリンゴの缶ジュースを飲んでくださいと手渡して帰ってもらったこと
を思い出した。

日常のありふれたささやかな出来事の中にも人と人の心が通うことがある。
それが何か心に染み込んでくる瞬間だった。

★3月1日(木)★
この間実家に帰ったときに両親から叔父がまた入院したと聞いていた。私
の住む街の総合病院にこれまでにも何度か入院をしていて、その度にお見舞
いに行っていた。

今日は仕事が早く終われたので甘いものが好きな叔父にお菓子を買って病
院へと向かった。両親からはまだおやつまでは食べないかもしれないとは聞
いてはいたが、少しずつそういうものも食べられるようになっているのでは
ないかと思いつつ、車を走らせた。

病室は看護詰め所の横にある個室で、叔父はちょうど鼻から入れた管から
栄養が入れられているところだった。入口手前から叔父の顔が見え、目を開
けていることがわかった。部屋に入って「おっちゃん、来たで」と声をかけ
た。

返事がなく、視線が合わない。甥っ子が来たことくらいはわかってくれる
だろうと思っていたが、何度か声をかけたり、のぞき込んでも視線が合わな
い。叔父の手は点滴のチューブを抜かないようにベッド柵に緩く固定されて
いた。その手が私の手を握ってきた。でも相変わらず視線は合わず、空ろな
眼をしている。

これまでに何度か入院を繰り返し、少しずつは体も不自由になってきてい
た叔父だったが、こんな状態とは思ってもみなかった。握り続けている叔父
の手は強くではなく、何か手触りを感じながら握っているかのような握り方
をしていた。私はそのまま握っているしかなかった。

若いときは身内の老いや病と直面したとき、それが自分からは遠いものの
ように感じたように思う。それは若さが邪魔をしていたのだろうか?中年と
なった今は老いや病が自分とはそれほど離れたのもではないように感じるし、
身近な人のそれは身にしみて切なく、何とも言えない思いが迫ってくる。

ずっと握っている叔父の手をそっと離して両手で叔父の手を握って
「おっちゃん、また来るわ」と病院を後にした。
(ゆったりといこう)

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○ 編集後記 ○

来期の当学会が開催するワークショップの案内を一部更新しました。

来期からはじめて参加できる プライマリーコースの平日昼間と夜間の
コース(日程)を新設しています。

昼間
http://www.enneagram.ne.jp/ws-annai/1-primary-day.htm

夜間
http://www.enneagram.ne.jp/ws-annai/1-primary-night.htm

いままでは、土日を中心に開催していました。
日程的に参加が難しかった方もこの機会にぜひご参加いただければと
思っています。みなさまの参加をお待ちしています。

*来期の全体のスケジュールは、近日掲載の予定です。またご案内します。

★ 相互紹介、随時受付中 ★

☆ 毎週日曜日配信 ☆
最終週には、ワークショップのスケジュールとともに、連載企画を掲載。
(本永)
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