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発行元:NPO法人日本エニアグラム学会   2006年9月17日 vol.120

エ二アグラム《自分探しの旅》
〜〜自己成長とコミュニケーションのための人間学〜〜

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自然界の小さな生きものに、傘をさす人の思いに、
ゆずりあいも、心がこわばり拒む姿も、見えてきます。
地球の片隅の、きょうの風景。

英知は、傘一本にも、叙情をこめて描写します。
共存はリスのように? ややハード・ボイルド調で?

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■目次■
● エニアグラム日記 タイプ8 「楽しい夏だった」  ●
●               「傘の花道」     ●
○ 編集後記                     ○
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「楽しい夏だった」

★8月21日(月)★
盛夏が過ぎて残暑が来た。我が家では真っ赤なカンナ、ピンクのフヨウ、
白と赤紫のサルスベリ、ハマユウ、白ランが盛りだ。これらは夏を夏らしく
彩り、夏を楽しませてくれる。リビングは華やぎ、ハマユウが香気を放って
いる。

★8月22日(木)★
我が家の谷戸の入り口に300坪ぐらいの屋敷林と廃屋があり、ドングリ
などの大木が数本うっそうと茂っていた。カラスのねぐらとリスの餌場になっ
ていたが、それがきれいさっぱり取り除かれた。

次の朝、あたりがただならぬ気配なので2階のベランダに出てみると、我
が家と前下の家の2階の屋根、周りの電線数条にカラスが30羽ぐらい集まっ
て大集会をしている。“カーカ〜グアーグア〜”「何だ何だ」「何があった
んだ」「これからどうなる・・どうする」と大激論。

その下の上下2条の電線をリスが飛び交いながら “ゲァ!グァ!”と行っ
たり来たり、明らかにおびえている。下を良く見ると野良のボス猫が茂みの
影からじっとにらみ上げている。・・・カラスの会議は次の日も続いた。

今日夕方になって、高い空を悠々と旋回していたトビが1羽電柱に舞い降
りて、“ピーヒョロロ〜ピーヒョロロ〜”。すると、カラスたちは一瞬沈黙。
1羽去り2羽去り、全員がいなくなった。それを見届けてトビも舞い上がり、
セミの大合唱が残った。やがて、ヒグラシの“カナカナ〜カナカナ〜”が日
暮れを呼び込んだ。

★8月26日(土)★
夕方久しぶりに葉山の息子夫婦の家を訪れた。朝から冷やして持参したカ
ヴァとシャブリの杯を重ねながら、彼女の手料理と談論風発を楽しんだ。

近所にエニアグラムの仲間から紹介された“マーロウ”というレストラン
があり、先日家族で訪れた。料理もホスピタリティーもとても良かったこと
が話題になった。マーロウといえばチャンドラーの作品の主人公でハードボ
イルドだ。

日本の夏は戦争体験を語る季節でもある。放送作家の息子が言うには:
「それを語るのに、多くの人の雰囲気は暗く、重く、湿っぽい。ところがオ
ヤジさんのは、懐かしそうに、明るく、リアリティの力強さで語り、ハード
ボイルド的なところがある」そうだ。そういえば、ヘミングウェイにも親し
みを感じる。これは、私の性格からくる特徴かも知れない。

★8月29日(火)★
この頃毎朝、朝食の時間に、リビングの前のツバキにリスが来て、“カサ
カサ”“カリカリ”と実をかじっている。あのカラスの一件以来かもしれな
い。

食事が終わると木から木へと飛び移り、柿の木へと飛び、まだ青い実を確
かめているようだ。デザートにはまだ早い。今年はビワをカラスとリスにあっ
という間に食べられた。柿の近くにブルーベリーがあり、毎日収穫している
が、これはデザートにはされていないようだ。柿は危ない。完熟寸前に採る
ことにしよう。

夕方、裏庭の茂みで鋭いリスのただならぬ声がする。出て見ると、ツバキ
の実を食べていた子リスが野良猫に脅されている。それを親リスが懸命になっ
て追い払おうとしているらしい。

こんな小さな庭でもドラマが沢山ある。ここのところ手入れができず、刈っ
た草も放置したままだ。その中で秋の虫がしっかり育った。コオロギの合唱
が心楽しい。

この夏は、大木が失われたのは誠に惜しかったが、自然の中に生きている
感覚を面白く、心地よく楽しんだ。あれ以来、悪戯の迷惑カラスがうろつか
なくなった。
(ガッツ)
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「傘の花道」
★9月2日(土)★
夕方、うす暗くなってきたころ、雨がとつぜん、ふりだした。

家に遊びにきていた礼子ちゃんときょうちゃんが、帰るというので、礼子
ちゃんに紺の折りたたみ傘を貸してやって、駐車場まで行った。私ときょう
ちゃんは、ピンクの大きめの傘に、いっしょに入った。

「あれ、この傘、こわれているよ」
礼子ちゃんが、折りたたみ傘の骨の部分を、一ヶ所指さした。
言われるまで、気づかなかった。でも、もう十年近く使っている傘だから、
たしかにそろそろだめになっても、おかしくはなかった。

それでも、一応はまだ使えそうなので、駐車場までは、その傘をさしていっ
てもらった。家からすこし離れた距離にある、有料駐車場だ。

ふたりを見送ったあと、私は、家に帰ろうとして、信号を待っていた。ピ
ンクの傘をリズミカルに打つ、雨の音が聞こえる。ふと見ると、となりに、
同じく信号を待っている一家がいた。

とつぜんの雨だ。その一家は、ちいさな赤ちゃんを抱いたお父さんだけが
傘をさしていた。あとは、お母さんも、ちいさな子どもふたりも、それから
おばあさんも、傘を持っていなかった。みんな、ぬれたまま立っていた。

母親は、大きな荷物をかかえていた。しかし、それよりも、私が気になっ
たのは、ちいさな子どもと、おばあさんだ。
子どもとおとしよりというのは、あくまでも身体的な能力のレベルでだが、
ときどき、私よりも弱いと感じさせるものがある。

私の手には、こわれた紺のおりたたみ傘がひとつ。とはいえ、少しの距離
なら、問題なく使えるだろう。

声をかけてみようか。まったく知らない人たちだから、いきなり話しかけ
たら、あやしまれてしまうかもしれない。

どうしようかと思ううち、信号が、赤から青へ変わった。

すると、子どもたちは、待っていましたといわんばかりに走りだして、横
断歩道をわたっていった。お父さんも、お母さんも、足早に歩きはじめた。

子どものすがたは、あっという間に、もうずいぶん小さくなってしまった。
そうだ、子どもなら、かけていける。でも、お年よりは、そうはいかない。
子どもにも、お父さんお母さんにもとり残されたかたちで、それでもおば
あさんは、ゆっくり歩いていた。雨が、ぱらぱらとおばあさんを打った。

私は、勇気をだして、おばあさんに歩みよった。
「あの、失礼ですけど、よろしかったら、この傘、お使いになりませんか」
右手につかんでいた紺の傘を、おばあさんにさしだす。すると、おばあさ
んは、びっくりして、私の顔を、見返した。

「少しこわれているので、ちょうどもう、捨てようかと思っていたんです。
お使いいただいたら、そのまま捨てていただいてかまいませんから」
おばあさんは、おどろいた顔で、
「うちにも、傘はすてるほどありますので・・・」
と、言った。

そうですか、分かりましたと会釈して、私はひきさがった。見知らぬ相手
なので、これ以上、すすめるのは、やめておいた。
あーあ、断られてしまった。
でも、私だって、知らない人にいきなり、傘をどうぞなんて言われたら、
びっくりして断っていたかもしれないな。

おばあさんは、商店街のほうへ、消えていった。私は、それを左手に見て
から、自分の家へと歩きはじめた。私はどうやら、長く働いてくれた私の傘
に、最後の花道を作りそこねてしまったようだ。

もしもこの傘が、雨に打たれて困っている人の役に立ったとしたら、こん
なにすてきなことはない。たとえ、そのあと、捨てられてしまう運命だとし
ても。最後の最後に、それでもだれかの役に立てるなら、傘もきっと、満足
だったろう。

家にもどると、私は、紺の折りたたみ傘を、玄関の叩きのわきにそっと置
いた。そして、長い間ありがとうねと、静かにつぶやいた。
(ここほれわんわん)
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○ 編集後記 ○

20年近く、同じサイズのワイシャツを着ていたのですが、首周りのサイ
ズがひとつ大きなワイシャツを最近買いました。とても首と肩が楽にな
りました。

少し苦しいと思いながらも、同じこと続けていた自分に少し呆れつつも
楽になったよころびに浸っています。

★ 相互紹介、随時受付中 ★

☆ 毎週日曜日配信 ☆
最終週には、ワークショップのスケジュールとともに、連載企画を掲載。
現在の連載は、「あなたのそこが好き!・・・タイプ」です。
(本永)

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